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流れる雲と夏の海 #1

October 11, 2015

 

これは、随分と昔に"North REVERSE~きたずみの私的書庫~"様に寄稿してエタってしまっていたエヴァンゲリオンの二次創作小説です。中断してしまって、本当に申し訳ありませんでした。

 

新しい劇場版とかも公開されて設定的に色々と不具合もあるとは思うのですが、旧TV版準拠で生暖かい目で読んで頂ければ幸いです(ノ∀`;)

いちおう、中断した第10話以降も書きたいなあ、と思っています。

 

不定期に更新します(・ω・`; )

─────────────────────────────────────────

 

「・・・・・・その・・・・・・ごめん・・・・・・」

 

長い沈黙。ヒグラシの鳴き声が沈黙を重くする。

わたしは・・・・・・頭の中が真っ白になっていて、地面がグラグラ揺れているような感じ・・・・・・。

 

それでも、どこかで冷静な自分が「・・・・・・やっぱりね」とか思っていたり。

 

「あはっ♪ やだな、シンジ君が落ち込むコトじゃないよぉ」

 

精一杯、明るく、軽~い感じになるように言ってみる。

笑顔・・・・・・引きつってない・・・・・・よね。

 

「ごめんね・・・・・・。シンジ君がアスカと付き合ってるの知ってて」

「・・・・・・霧島・・・さん・・・・・・」

「卒業、近いし・・・・・・ケジメをつけときたかんだ。もう、こんなコトしないから」

 

もう、行こう・・・・・・これ以上・・・・・・わたし・・・・・・

 

「真剣に返事してくれてありがとうね♪ うん、何かスッキリした」

 

言葉が早口になっちゃってる・・・・・・。シンジ君・・・・・・気付かないで・・・・・・。だめ、シンジ君の顔・・・・・・まともに見れないよ・・・・・・。

 

「・・・・・・うん・・・・・・ごめん・・・・・・」

「これからは友達としてヨロシク! じゃ、また明日ね♪」

 

わたしは踵を帰すとシンジ君から見えなくなるところまで、元気良く走った。

 

★ ★ ★

 

角を曲がる。校舎の陰、こっちにはシンジ君は来ないだろう。ふうっ、と気が緩む。緊張の糸が、ぷつりと切れた。ずしっと脚が重くなり、平衡感覚を失ったみたいに地面がグルグル揺れている。胸の奥の方が苦しい・・・・・・。

 

なんか・・・・・・だるい・・・・・・。

 

人目に付かない柱の陰に、のろのろと重い体を引きずって、寄りかかる。

 

「はあ・・・・・・」

 

タメ息をひとつ。遠くで部活やってる声が聞こえる。・・・・・・何にも考えられないや。

ずるずると崩れるように座り込む。抱え込んだ膝に顔を埋める。

 

「・・・・・・ぜんぜん・・・・・・スッキリなんて・・・・・・してない・・・・・・よ・・・・・・」

 

いつもの自分とは全然違う、か細くて弱々しい声だった。

 

 

 

流れる雲と夏の海

── 第1話 ──

 

 

 

西暦2015年。サードインパクトは世界を、ちょっとだけ変えた。それなりの大混乱はあった。LCLに消えたままの人も、まだ沢山いる。

 

だけど、多くの人は戻ってきた。

1年が過ぎ、世界は復興に向けて動き始めていた。その中心が第三東京市。

 

★ ★ ★

 

ホントは学校をサボっちゃおうかとも思った。

 

でも、それじゃシンジ君に心配かけちゃう。自分の行動の責任は自分で払わなきゃ。思いっきり落ち込んでいるケド、絶対、みんなにバレないように・・・・・・いつものように脳天気に明るくいこう。

 

ちなみに、わたしは赤木リツコさんのところに居候している。本当は昨日から誰にも会いたくなかったんだけど、そう言うときに限ってネルフで忙しい筈のリツコさんが定時で帰ってきてたりする。

 

リツコさんも察しのいい人なんで「何かあったな」くらいは気付いているみたいだったけど、詮索するようなこともなく、いつものように自然に接してくれた。

 

・・・・・・わたしも学校で、ああいう風にできれば、いいんだけどなあ。

 

そうこうしてる内に3-Aの前まで来ちゃった。ドアの向こうから、クラスメート達の知った声が聞こえてくる。

 

「・・・・・・よし、いくわよ」

 

気合いを入れて、小さく呟くと景気良くドアを開ける。

 

「おっはよ~っ!!」

 

ま、いつものコトだから、驚いて振り向いたりする人はいない。「おお、賑やかなのが来たか」って感じ。委員長のヒカリがいつものようにニコッと笑いかけて手を振る。鞄を自分の席に置くとヒカリの席に向かう。ちらっとシンジ君の席を見るとまだ、来てないみたいだった。あの二人はいつも時間ぎりぎりだから。

 

ヒカリの席に行く間も、何人かと挨拶を交わす。

 

「おっはよ♪ ヒカリ、元気?」

「おはよう、今日は剣道部の朝練はなかったの?」

「三年は、もうすぐ引退だからねえ。あんま、練習ないんだ」

 

まだ来てない前の席のイスを引くと背もたれを跨いで座る。確か、いつもこのくらいは、してた・・・・・・はず。

 

「もう、マナったら・・・・・・そんな座り方、はしたないよ」

「えへへ♪ ごめん」

 

横向きに座り直して、ヒカリの方を向く。あとは、いつものように談笑していると、廊下の方から賑やかな関西弁が聞こえてくる。あっ・・・・・・ヒカリが、ぴくって反応した・・・・・・くくくっ。

 

「じゃ、わたし、席に戻るね」

「・・・・・・えっ?」

「だって、愛妻弁当、渡すんでしょ。鈴原に♪」

 

『愛妻』ってところを強調しながら言ってみると、ヒカリは真っ赤になって慌ててる。

 

「ちょっ・・・・・・ち、違うわよ! これは、余り物だって・・・・・・」

「ま~、ま~、いいから、いいから」

 

わたしが立ち上がると、ちょうど鈴原と相田の二人が教室に入って来た。

・・・・・・あれ、シンジ君とアスカがいない・・・・・・?

 

「おはようさん」「おはよう」

 

鈴原と相田が声を掛けてくる。あれ、いつも四人でくるのに、どうしたんだろう?

・・・・・・やっぱり、昨日、わたしがシンジ君にあんなコト言ったから・・・・・・

 

「お、お、おはよう・・・・・・鈴原」「おっはよ! お二人さん♪」

 

・・・・・・ヒカリ・・・・・・相田、忘れている・・・・・・

 

「・・・・・・あ! アスカ達はどうしたの?」

「時間になっても来けえへんから、先、来てもうた」

 

話をしてる二人を通り抜けて相田は挨拶を済ますと、さっさと自分の席に行ってしまう。

 

・・・・・・そういえばいつも、この時間──いつもヒカリが鈴原にお弁当を渡す──相田は離れたところにいる・・・・・・意外と気を遣ってるのかな・・・・・・?

 

ヒカリと鈴原がお約束のラブコメをしてるのを横目に、そんなコトを考えながら自分の席に戻った。いつも、シンジ君にまとわりついてたから・・・・・・。そんなことも気付かなかったのかもしれない。

 

ふと、相田の方を見てみる・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・『最新型超高画素カメラの威力は、どうかな?・・・・・・くっくっくっ』とか言ってそそくさと鞄からデジカメを取り出すと、わたしの幾つか前に座っているレイにレンズを向けてる・・・・・・。

 

訂正。やっぱり、只のカメラ小僧。ちょっとでも見直しかけた自分が情けないよ。

 

・・・・・・そのレイの方を、今度は見てみる。わたしの席、窓際の後ろの方だからクラスの全体が眺められるのね。カヲル君が、まとわりついてるのも、いつものこと。たぶん、会話はカヲル君が一方的に話しててレイは無視してるだけなんだろうけど・・・・・・。

 

・・・・・・リツコさんの話だと、あの二人がサードインパクトに大きく関わったみたいなんだけど・・・・・・『今では、二人とも只の人なんだから、仲良くしてあげて』とか言ってた。

 

浮世離れした美男美女だから、相田の被写体にはもってこいなのかもねえ。

 

お、もうすぐ予鈴だ・・・・・・1時限目はHRなんだけど。ホントにシンジ君とアスカったら、何やってんだろう?

 

「ああっ、もおっ! もっと、キリキリ走りなさいよ。危なく遅刻するとこだったじゃない!」

「そんなこと言ったって・・・・・・アスカが・・・・・・」

 

・・・・・・と慌てて駆け込んできた二人は教壇の前で、言い合いを始めようとしている。まあ、いつものこと・・・・・・。

 

そんな、ところで担任の先生が教室に入ってきた。

 

「はい、はい。席について~。惣流さんも碇君も席に着いて」

 

ちょっと、鼻息の荒いアスカはどすどす歩いて行くと席に着く。それでも可愛く見えちゃうんだからズルいよなあ・・・・・・。

 

シンジ君がレイのところに寄ってお弁当を渡してる。

 

「朝・・・・・・渡せなくって、ごめんね・・・・・・レイ」

「問題ないわ・・・・・・ありがとう・・・・・・お、お、おに、おに・・・・・・」

 

くくくっ・・・・・・未だに「お兄ちゃん」て言えないらしい。こっからじゃレイの顔が見えないのが残念だなぁ。きっと赤くなって俯いてるんだろう。そういえば、前にシンジ君が『レイも父さんも、同じような顔して口ごもっちゃうんだ。変なところ似てるんだ・・・・・・』って笑ってたなー。

 

あの笑顔が堪んないだよなあ・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「おい、霧島、始まるぞ」

「へぁ・・・・・・? 何?」

 

呆然と、その隣の男子を見上げていると・・・・・・

 

「きりーつ! 礼!」

 

思わずシンジ君の微笑みに浸っちゃってた。

我に返って慌てて立つと、もうみんなは座るところで・・・・・・。先生、睨まないで!

 

「なに、ぼーっとしてんだ?」

「あはは♪ まいった、まいった」

 

頭を掻きながら席に着く。胸が苦しい・・・・・・。ちょっと自己嫌悪。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・もう「友達」なんだから・・・・・・そんな風に思っちゃダメ・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・思っちゃ・・・・・・ダメ。

 

★ ★ ★

 

気を取り直して、先生が話を始める。まあ、社会問題とか青少年のあり方だとか、そんな話だ。

 

・・・・・・ちょっと、校庭なんか眺めてみる。

シンジ君とアスカが、いつも遅刻ギリギリなのは訳がある。

 

使徒戦の頃はネルフの葛城さんちに二人とも住んでいたんだけど、今はシンジ君はお父さんとレイと三人で暮らしているんだ。意外だよね。

 

シンジ君から聞いてたシンジ君のお父さんのイメージからすると想像つかないんだけど、サードインパクトの後、シンジ君とレイに土下座をして謝ったらしい。

 

そんで、遺伝的にシンジ君とレイは兄妹だと言うことがわかって──レイの生い立ちは知らないし、前は他人ってコトになっていたから、二人がどういう兄妹なのかは分からないけど──そういうことになったみたい。

 

ただ、兄妹なのに別姓のままなのよね・・・・・・なんでだろう?

アスカは、シンジ君と同居が知らない内に解消になってて、ぶうたれてたっけ(笑)

 

「知らない内」ってのは、ちょっと訳があるんだけど・・・・・・。

で、そのアスカは葛城さんちに住んでいる。家事は・・・・・・アスカが何とかやってる。これも意外。

 

まあ、シンジ君が時々、行ってるみたいだから。そんなんで、シンジ君とアスカが二人っきりになれるのは、二人の待ち合わせの場所から、相田と鈴原が合流するところまで、と言うことになる。

 

どうも、その間、いちゃいちゃしてて遅くなってるんじゃないかとわたしは睨んでいる。

 

・・・・・・・・・・・・よし、こんなこと考えても動揺してないぞ・・・・・・うん、この調子・・・・・・。

 

そういえば、シンジ君と同居してるレイが一緒に来ないのは・・・・・・彼女なりに二人のこと応援・・・・・・してるのかなあ?どうだろう?

 

それはともかく、あと一番、不思議なのは、加持さんとカヲル君が同居してること。だって、夕飯時とかどんな会話してるんだか、全然、想像つかないじゃない。ヘンだよねえ。

 

『アタシがいない時にシンジに言い寄っていたのよ! 女ったらしの加持さんのところで丁度いいのよ!』

 

・・・・・・なんて、アスカは言ってたけど。昔は黄色い声で『加持せんぱぁい♪』とか言ってたのに、今となっては加持さんもヒドイ言われ様よね。そのカヲル君が今はレイにぞっこんみたいで。同居人の効果絶大・・・・・・なのかな。レイは殆ど相手にしてないのに全然、めげてないところは凄いかも。

 

そんなことをぼんやり考えて外を眺めていたら、いつの間にか先生の話も各委員会からの連絡も終わって、先生がまた何か話し始めていた。

 

「・・・・・・と、いう訳で中間テストも終わったので、席替えをします」

 

・・・・・・・・・・・・!!

 

「おおお~~」

 

クラスメート達の期待と不安の混じったどよめきが聞こえる。だけど、わたしはそれどころじゃなくって、アセっていた。

 

・・・・・・シンジ君の近くになったら・・・・・・隣なんかになったら・・・・・・どうしよ・・・・・・

 

★ ★ ★

 

「ははは・・・・・・ま、そんなもんよね」

 

わたしは乾いた声で呟いていた。

 

くじ引きが終わって、席の移動が済んだ。考えてみれば、シンジ君が隣になる確率なんてそんな心配するほど大きくない。ばかばかしい取り越し苦労にほっとしたような・・・・・・してないような、複雑な心境だった。

 

「・・・・・・よろしくな、霧島」

 

・・・・・・と、わたしの隣の男子が声を掛けてきた。

 

「げ・・・・・・相田」

「なんだよ、それ。今更、驚くなよ」

 

そうだった。シンジ君やアスカの席と自分の席ばかり気にしてて、自分の隣が誰かなんて全く、気にしてなかった。

 

「えへへ♪ 今ひとつ理解できてなかった」

「・・・・・・? まあ、いいや。夏休みまで諦めてくれよ」

「そーね。隣なのは別にいいんだけどさ。アップとかで盗み撮りしないでね」

 

ニコッと笑いかけつつ、相田の腕時計に付いている小型CCDのレンズを指さす。

 

「ぐっ・・・・・・これに気が付くとは流石だ・・・・・・」

「くすくす・・・・・・使うときだけ腕時計すればいいのに。肌身から離せないところがオタクよねえ」

 

鞄に腕時計をしまうと、滑稽なほど肩を落として落ち込んでいる。ちょっと・・・・・・可哀想になってきちゃった・・・・・・。

 

「あのさ・・・・・・『アップ』はヤだけど・・・・・・普通のだったら・・・・・・良いから・・・・・・」

「ええっ!! 本当!?」

 

がばっと起きあがって、わたしの手を握ると、うるるるっとした目で私を見上げる。・・・・・・・・・・・・こいつ・・・・・・よっぽど、女の子から優しくされたこと、ないの?

ちょっと、苦笑しながら、わたしはコクンと頷いた。

 

「・・・・・・うん。えっちなのはダメだよ」

 

相田は、目をキラキラさせながら首をぶんぶんと縦に振る。

・・・・・・実際、相田の写真は「いい」んだ。遠足のスナップなんかも「格」が違うってかんじでこの時ばかりは、珍しく相田は女子にも引っ張りだこだ。だから、男子がこぞって買いあさるのも解る。

 

何て言うのかな・・・・・・一番、いい時にシャッターを切ってる、って言うか・・・・・・実物より格段に、良く撮す・・・・・・ある種、才能あるんだけど、盗み撮りや覗き撮りとかしなきゃなあ。女子だって、もっと喜んで撮ってもらいたがるんじゃないかな。

 

「おい、相田に霧島、仲がいいのは悪い事じゃないけど、今は授業中だぞ」

 

・・・・・・え?

 

慌てて、声の方を振り向くと、先生が目の前でわたし達を見下ろしていた。

 

「やだっ・・・・・・手、離してよっ!! 相田!!」

「うわ、す、すまん!!」

「漫才は程々に・・・・・・な」

 

先生が優しく言うと教壇に戻っていく。クラスはドッと笑い声に包まれる。恥ずかしさの余り机に突っ伏す。ううう・・・・・・顔なんて上げらんないよう。先生が教壇から静かにするように全員に注意を促すと、学校行事の連絡の話の続きを始めた。

 

もお・・・・・・席替え早々、こんなんじゃ、先が思いやられるよ。

 

ちらっと、隣の相田を見てみる。そっぽを向くように天井を無意味に眺めて口笛を吹くようなマネをしているけど挙動不審なことこの上ない。

 

天井を見ていた視線だけががちらっとこっちを向く。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「「ぷっ・・・・・・くくくっ!」」

 

相田の様子も可笑しかったけど、わたしもかなりマヌケな顔をしていたのかもしれない。ちょっとの間の後、わたし達は同時に吹き出した。

 

「へへへ♪・・・・・・おこられちゃったね」

「くくくっ・・・・・・こんなことしてると、また注意されるよ?」

 

相田は、にっこりと屈託のない笑顔で言った。わたしも、何も考えずに笑っていた。

ふっと、相田は柔らかい微笑みを浮かべると、さらっと言った。

 

「ふむ、やっぱり無理に笑ってるより、霧島はそういう笑顔の方が似合うな」

 

・・・・・・・・・・・・!! わたしが・・・・・・落ち込んでるの・・・・・・気付いていたの?!

 

 

つづく

 

 

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